9-B 土香炉(どこうろ)(1) 土香炉中尊前において三具足、五具足を荘(かざ)るとき、金香炉は使用せず、その代りに透し入り土香炉を使用します。「なかご」といわれる落しの入った、唐草模様の透し入りの青磁香炉です。土香炉は三本足です。その一本を正面にしましょう。土香炉はすべて燃香用としての役割を持っています。燃香とは、土香炉に抹香(まっこう)を盛り、これに火をつけた附茸(つけだけ)で燃ずることです。抹香とは樒(しきみ)やあせびの葉を乾燥させて粉末にしたもので、附茸とは古木に生じた白い茸(きのこ)を乾燥させたもの、また、竹の先端に硫黄を塗ったものともいわれます。今のマッチに代わるものです。現在では線香がその両者の代用として使われます。 |
(2) 土香炉の関連知識お香は私たちの体臭を消して心身をしずめるはたらきがあり、人びとにひろくゆきわたる清浄な如来の徳もあらわしています。お香のたき方には、焼香と燃香とあり、焼香とは、火だねを入れた香炉に沈香や五種香をたく仕方です。燃香とは、もと香炉の中に敷いた香につけ火したもので、その習慣は、実如上人の頃から行われていたと言われますが、その後、中国から伝えられた「線香」が天文年間(十六世紀)から燃香の簡単なかたちとして発達し、江戸時代にはひろく普及し、燃香を代用するようになりました。その点からいって、線香は香炉の中に折ってねかせるのが本義といえます。真宗では、線香を立てないで、土香炉に入るように折ってねかせます。本数は何本でもよろしいが、むやみにもやす必要はありません。おつとめのはじめの時間しかもえていなくても、香りが部屋にいきわたればそれでいいのです。 |
【土香炉の足】 |
【土香炉】 |